心の働きがあるのだな、ということ

箕輪顕量

呼吸の観察であれば、息に注意を振り向けます。息が入ってくるときには、何か風のような感覚があって、それに対して「入っている」という心の働きが存在しているのだな、ということがわかります。

同じように、息が出ていくときにも、出ていく風のようなものがまずあって、それに対して、「出ている」と気づいている心の働きがあるのだな、ということがわかってきます。

このように、最初は一つのものだと思っていたものが、突然、二つのものに分けられて、捕まえられることが起きてきます。このことを「名色(みょうしき)の分離」と言います。注意を振り向けている心の働きが「名(みょう)」で、注意を振り向けられている対象が「色(しき)」と呼ばれます。呼吸の観察でいえば、風のような感覚が「色」で、心の働きが「名」です。

そのことにハッと自然に気づくことを、「名色の分離の智(ち)が生じた」と言います。誰にも教えられることなく、自分でそのような体験を初めてしたときには、自然と悟りが生じたような気持ちになります。

(箕輪顕量「瞑想でたどる仏教」p23)