イメージを描く数秒前には「傷」も痛みも苦しみもなかった

プラユキ・ナラテボー

たとえば、私たちも「傷ついた!」などと、言ったり耳にしたりする。ちょっと冷静になって振り返ってみれば、そのイメージを描く数秒前には「傷」も痛みも苦しみもなかったはずだ。よく見てみれば「傷」というものはこの現実的な空間にはどこにもついてない。

「壁が立ちはだかっている!」などというのもまったく同じこと。そのイメージを描く数秒前には「壁」は立ちはだかってきていなかっただろうし、よく見渡してみれば、そもそも「壁」などというものはこの現実的な空間にはどこにも立ちはだかっていない。

でも実際、「傷ついた!」というそのイメージの描写と同時に、心の痛みや苦しみはたしかに生じる。あるいは「壁が立ちはだかっている!」というイメージとともに私たちはその威圧感に圧倒され、その瞬間、本当に動けなくなってしまう。

(プラユキ・ナラテボー「「気づきの瞑想」を生きる」p241)