自らの妬みや非難や恐怖を認識した時点で、人はすでに受け入れへの確かな一歩を踏み出しています。ありのままの自分を受け入れてしまえば、もう自分を変えるために格闘する必要はなくなります。
自分が自分に対して必要以上に厳しくなっていることを認識し、自分の中の否定的な種を受け入れた瞬間に、前進がはじまっています。自分の心の否定的な作用に気づかない人は、なかなか前進することができません。
とはいえ、哀れみを深めようと努力している人の心には前向きな要素しかない、と単純に考えるのは間違いです。もしそうなら、実践は必要なくなります。心の中に否定的な作用をする種をもっているからこそ、私たちは実践を続けるのです。
この実践はいたって簡単です。自分の心の否定的な作用を認識するだけ。この認識を育むだけで、私たちは着実に前進します。悩む必要は何もありません。
(ティク・ナット・ハン「禅的生活のすすめ」p52)